組織が大きくなればなるほど、企業は日々多くのデータを出力したり、入力したりするのが一般的です。これらのデータは業務上不可欠な理由から発生していることがほとんどですが、近年は積極的に企業ないデータを有効活用しようという動きも活発です。企業のデータ活用を推進する上で、注目したいのが非構造化データの存在です。膨大な情報量を持ったビッグデータを有効活用するためには、非構造化データと構造化データの違いを理解し、それぞれの活用方法を知る必要があります。今回は、そんな非構造化データに注目が集まる背景を理解し、ビッグデータの運用をスムーズに進めるためのポイントをご紹介します。非構造化データとは非構造化データとは、その名の通りデータ情報に明確な定義がなく、特定構造にとらわれることなく集積された情報のことを指します。一般的に、コンピュータが扱いやすいとされているデータ形式は情報構成が特定のフレームワークに統一されており、数値やテキスト情報が読み込みやすいタイプのものです。しかし働き方や職場環境が違えば、扱うデータ形式も異なってくるのが一般的です。業務や監修に則って多様な形式で日々データのやり取りが行われていますが、そんな中で整理されることなく、そのまま山積していったデータを非構造化データとして扱います。また、非構造化データはユーザーである人間の可読性を意識して作成されるなど、視聴覚に対する心地よさを重視されることも珍しくありません。人によって文章の読みやすさやレイアウトのわかりやすさは変わってくるため、これも非構造化データの多様化を後押ししている要因と言えます。非構造化データの特徴非構造化データは、私たちの生活にとって最も身近な形態のデータであるとも言えます。ここでは、そんな非構造化データの特徴について、良い面と悪い面を確認しておきましょう。汎用性が高い非構造化データのメリットの一つが、汎用性の高さです。人間の五感を意識して作成されることが多いため、感覚的にその情報が何を意味しているのかを理解しやすいという強みを持っています。また、特定のフレームワークに依存することがないため、いざコンピュータに読み込ませる必要が出たときには、柔軟に必要な形態へ変換できる扱いやすさも魅力と言えます。多くの人が非構造化データを採用しているのは、このような取り回しの良さに魅力を感じているからと言えるでしょう。収集が容易である非構造化データは人間にとって扱いやすいデータ形式のため、最も簡単に蓄積できるのも強みです。テキストデータ、画像データと大まかな分類でひたすらにデータを集めればよいだけなので、少しインターネットで検索するだけで、膨大な非構造化データにアクセスすることが可能です。また、企業で蓄積されているデータの多くも非構造化データです。業務に関する情報をくまなく内包しているため、膨大な情報量に達すると、ビッグデータとして大きな価値を持つようになるでしょう。ストレージを圧迫する非構造化データは豊かな情報量を持つ一方、ストレージを圧迫するというデメリットもあります。デジタルデータは無形であるため、紙の書類のように情報がそのままオフィスを圧迫するということはありません。しかしデータを保管しているサーバーやPCのストレージは少しずつ圧迫されていくため、必要に応じてストレージの拡張を行う必要があります。ストレージを拡張するとなると、物理的なハードウェアを導入するコストが発生します。本体購入費用はもちろん、会社にサーバーを設置するスペースを設ける必要が出てくるなど、負担の増加が懸念されます。そのため、デジタル情報をスマートに扱うためには、ある程度非構造化データをスリムにして、最低限の情報に絞って管理するという手段も検討する必要があるでしょう。データサイエンスの知見が必要非構造化データの取り扱いには、ある程度のデータサイエンスの知見も求められます。特にコンピュータにデータをインプットさせる場合、コンピュータにとって可読性の高い形式に変換する必要があります。この場合、どうすれば読み込みやすくなるのか、どんな情報を取捨選択すればよいのかについてなどの問題に対処すべく、データサイエンスのスキルが必要になります。優秀なサイエンティストがいなければ、非構造化データのスリム化は大きな課題となるでしょう。セキュリティリスクが大きい企業が持つあらゆる情報をデジタル化することで、紙媒体を紛失したり、盗難されたりする心配はなくなります。しかしインターネットに自社情報を接続すれば、サイバーセキュリティの問題も新たに発生する点は覚えておきましょう。企業を標的としたサイバー犯罪は、近年増加傾向にあり、その被害額も増えつつあります。特に日本企業は世界標準に比べてサイバーセキュリティの強化が遅れているとされているため、多くの国から標的となる可能性が高いと言えます。情報のデジタル化で浮いたリソースを活用し、セキュリティ強化にも力を入れましょう。一般的な非構造化データの例ここで、私たちが触れることの多い一般的な非構造化データの例を見ておきましょう。いずれもPCのストレージを多く圧迫している要因であるとともに、企業情報が詰まった付加価値のあるものばかりであることがわかります。メールメールは企業がコミュニケーションを行う上で、最も一般的なツールとして普及しています。メール一通はわずか数キロバイトのテキストデータですが、何年も業務を続けていると、いつの間にか膨大なデータ量となっていることも珍しくありません。また、メールは非構造化データらしく、フォーマットがほぼ定まっていないのも特徴です。そのため、メールデータをコンピューターに読み込ませるのは難しく、彼らに学習させるためには多くの変換作業を必要とします。画像データ画像データも、非構造化データの中ではポピュラーな存在と言えます。画像データは画像によって情報のバリエーションが豊富であるため、人間の目からでしかその意味を理解できないことも多いのです。例えばリンゴの写真を撮影したつもりでも、一緒に木々の様子や人の顔が写っていると、コンピュータはどういう情報なのかを正しく把握できません。あるいは領収書を画像データとして保存していると、そこから文字情報を抽出しなければならないため、他のフォーマットと合わせて扱うことが難しくなります。必要に合わせて、画像データも正しく区分してやらなければなりません。WordやExcelデータオフィス業務を実施する上ではもはや当たり前のように採用されているWordやExcelデータも、非構造化データの一種です。レイアウトや表計算の方法は業務や企業によってバラバラなので、特定のフレームワークに当てはめなければコンピューターにとっての可読性を高めることはできません。また、必要なデータ以外の情報を削除しなければ、無駄に容量がかさばってしまう点にも注意が必要です。構造化データとは非構造化データと対照的な存在であるのが、構造化データです。その名の通り、データが特定のフレームワークに基づいて構造化されており、コンピューターにとっての可読性を重視したデータとなっています。ERPやCRMなど、企業の業務を支えるシステムのデータベースは、全て構造化データとして情報が保存され、管理活用を促しています。非構造化データとの違い非構造化データとの大きな違いが、データの形式が統一されている点です。非構造化データで顧客情報を管理する場合、エクセルで作った表で管理している顧客情報もあれば、名刺をスキャンして保存している顧客情報もあるなど、さまざまな形式で保管されることとなります。一方の構造化データは、データのフォーマットを必要に応じて統一し、瞬時にコンピュータが把握できる形態で保管されます。そのため、社内システムの運用や、AIの機械学習をスムーズに実行するためには不可欠の形態と言えるでしょう。半構造化データとの違い構造化データと非構造化データに加え、半構造化データと呼ばれる情報も存在します。これは、非構造化データをベースとしながら、特定のフォーマットに適合するメタデータを含有しているデータのことを指しています。完璧に構造化されたデータを用意できない場合、半構造化データにメタタグを付与するだけでも、機械学習の学習効率を高めることができます。場合に応じて使い分けましょう。非構造化データが注目される背景非構造化データという枠組みに注目が集まったのは、これまでは扱いにくいとされてきた非構造化データも、ますます扱いやすい環境が整備されていることに背景があります。非構造化データの活用機会増加の理由として、以下の二つが挙げられます。AI活用が進展したため一つ目の理由は、AI活用の機会が大幅に増えているためです。AIは従来のコンピュータとは異なり、自発的に物事を判断できる能力を有したプログラムです。先述の画像データについても、学習が丁寧に実行されたAIであれば、自ら画像分類を確実に、そして人間以上のスピードで実行できます。少し前までは近未来の技術だったAIも、膨大な学習データの登場とハードの進化によって、一般企業でも簡単に実装ができるようになりました。AIの普及とともに、データの構造化、あるいは未変換での活用機会が増えると期待されており、非構造化データの価値も高まっています。ビッグデータ活用が普及したため二つ目の理由は、ビッグデータへの注目です。レシート情報や監視カメラの映像など、これまでは特定の目的以外では使われることのなかった膨大な量の情報も、AI技術やデータサイエンスの発展により、活用機会が増加しています。また、5Gや光通信などの優れた通信技術が急速に普及したことで、膨大な情報量でも速やかにデータセンターへと送信できるようになりました。リアルタイムで情報を分析できる仕組みが整ったことで、ビッグデータの有用性はますます高まっています。ビッグデータは、言ってしまえば非構造化データの集合体です。一見すると煩雑なデータセットであっても、目的に応じてうまく情報を抽出する技術と創造性を発揮することで、大きな価値を生み出すことにもつながります。非構造化データ活用のポイント非構造化データを有効活用するためには、以下の二つの点へ注目する必要があるでしょう。順にご紹介します。データ管理のあり方を見直す一つ目のポイントは、データ管理のあり方を見直すという点です。いくら非構造化データが有益な情報になりつつあるとは言っても、正しく使用するためのアプローチが確立されていなければ、ストレージを圧迫するだけの余計な存在となります。財布の中に挟まり続けているレシートは、その有用性に気づけなければ紙ごみと大差がありません。非構造化データでフォーマットが存在しないとはいえ、一定のフレームワークを用意し、必要の際には引っ張ってこれるような仕組みづくりを行っておきましょう。メタデータ活用とアノテーションに注目する二つ目に、メタデータの活用です。非構造化データを変換して構造化データに落とし込む必要はなくとも、あらかじめメタデータを貼り付けることでラベリングを行い、管理の効率を高めるのは、有効な手法です。いわゆるアノテーションと呼ばれる作業ですが、画像にテキストデータを貼り付けたり、統一された形式に変換したりと、必要に応じて行うタスクは異なります。また、データ量が増えれば増えるほど、これらの業務負担は大きくなるため、自社のリソースと相談しながら実施を検討しましょう。FastLabelでは、そんな非構造化データのアノテーションを高品質で代行するサービスと、効率よく管理できるプラットフォームを提供しています。アノテーションは専門のプロフェッショナルが代行するだけでなく、作業の進捗状況を一目で把握できるため、スケジュール管理を円滑に行えます。アノテーションの委託や、業務の効率化を検討されている際には、お気軽にご相談ください。おわりに今回は、非構造化データが注目を集める背景や、どのように運用すれば良いのかについてのポイントをご紹介しました。コンピュータにとっては可読性の低い非構造化データも、その汎用性に注目し、正しく方向づけを行ってやることで、無限のデータ活用を進めることができます。適切なデータ管理体制を整備し、ビッグデータの運用を推進していきましょう。