膨大なデータを分析して精度の高い予測・判断の技術(機械学習)を持つAIを活用していけば、ビジネス革命にも繋げられます。そのため、AI開発に注目が集まっています。AIの技術を指す機械学習には種類があるため、AI開発前にそれぞれの特徴を理解しておきましょう。AI分野でよく耳にする機械学習とは何だろう?機械学習の種類には何があるんだろう?それぞれの機械学習は何ができるんだろう?この記事では、3つの機械学習(教師あり学習・教師なし学習・強化学習)の特徴について詳しく解説します。AIとはAI(Artificial Intelligence)は、「学習・推論・認識・知覚・判断」の機能を人工的に実現することを指します。一般的には、コンピュータに人間のような判断・行動をさせるための研究分野で使用されます。しかし、学術的な定義は存在していません。情報通信白書「国内の主な研究者による人工知能(AI)の定義」の研究者による定義・説明文は各自で異なります。野村総合研究所の調査報告書では、「コンピュータが人間のように見たり、聞いたり、話したりする技術」というイメージをAIに対して抱いている方が多いことが読み取れます。AIは研究分野ですが、定義は存在しないと理解しておきましょう。AIの大分類AIは「汎用人工知能」と「特化型人工知能」に大きく分類できます。 機械学習とディープランニングの違い(出典元:総務省 ICTスキル総合習得教材「人工知能と機械学習」)「AI」「機械学習」「ディープランニング」には包含関係があります。AIは研究を指しており、AI技術として機械学習が存在し、機械学習の1つの技術としてディープランニングが存在します。次の項目からは、AIの学習方法(機械学習)について詳しく解説していきます。 AI学習(機械学習)の種類AI学習(機械学習)には「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」があります。ディープランニングは「教師あり学習」の技術の1つです。 AI学習(1):教師あり学習AI学習(機械学習)には3種類に分類できます。それぞれの機械学習の特徴について理解を深めておきましょう。まずは、教師あり学習について解説します。 基本概要教師あり学習は、データに正解ラベルを付けた状態でAIモデルに学習させていく手法です。正解ラベル付きのデータを「教師データ」と呼びます。教師データを参考にして、データの正解・不正解を明確に判断していきます。教師あり学習の目的は、データを実用的な価値へ昇華させることです。インターネットの普及により、膨大の量のデータ(ビッグデータ)が取得できる時代を迎えました。このようなビッグデータをビジネスに活かすことが求められており、AI開発が行われています。分析手法教師あり学習の代表的な分析手法には「回帰分析」と「決定木」があります。活用事例教師あり学習の活用事例には、次のようなものがあります。■回帰分析の活用事例「駅からの距離」から「家賃」を予測「広告費」から「ライブコンサートの来場人数」を予測「広告宣伝費」から「売上」を予測※左側の「」を説明変数と呼び、右側の「」を目的変数と呼びます。■決定木の活用事例「購入履歴情報」から「購入者の特徴」を予測「製品の要素」から「顧客満足度」を予測「応答履歴」から「顧客セグメント」を予測※画像の識別は、特徴量を数値に変換して分類されています。 AI学習(2):教師なし学習次に、教師なし学習について解説します。基本概要教師なし学習とは、データに正解ラベルを付けない状態でAIモデルに学習させる手法です。教師なし学習では、予測や判定の対象となる正解が存在しません。そのため、回帰分析や分類には対応できません。しかし、データの法則を導き出して、自動的にグルーピングすることを得意としています。正解・不正解が明確でない分類などに教師なし学習が役立ちます。教師なし学習を利用する目的は、データ内に存在する未知のパターンを見つけ出すことです。世の中には、正解・不正解が明確でない問題が数多く存在しており、解明するために用いられています。しかし、教師なし学習で導き出される結果は、必ず好ましいものとは限らないため注意しましょう。分析手法教師なし学習の代表的な分析手法には「k平均法」「アソシエーション分析」「ソーシャルネットワーク分析」があります。活用事例教師なし学習の活用事例には、次のようなものがあります。 ■k平均法の活用事例「顧客情報」から「高級品志向層」「流行追求層」「保守層」に分類する→3つの層の顧客に対してパーソナライズ化したDMを送付することで、開封率・商談率・契約率が上がる■アソシエーション分析「既存顧客情報」を参考にして「ショピングカートの中身」を予測する→商品購入の流れを予測し、オンラインショップの商品配置やデザインを変更することで購買促進に繋げる■ソーシャルネットワーク分析「SNS上の友人関係」から「友人の特徴」を解析する→友人の特徴を解析すれば、本人がどのような人物であるかを解析できる AI学習(3):強化学習次に、強化学習について解説します。基本概要強化学習とは、嗜好錯誤しながらAI性能を最大化させるための学習方法です。強化学習の大きな特徴は、長期的な視点に立ちながら価値を提供できることです。後述しますが、株の売買による利益を最大化させるための提案などに活用されています。長期的な視点に立ち価値を提供することを目的としているため、ゲームなどとも相性が良いです。仕組み強化学習の仕組みを簡単に述べると、以下の通りです。 1. エージェントが環境の中に置かれて、その環境に対して行動を起こす(子供が自転車に乗る練習をはじめる)2. エージェントの行動により更新された状態と報酬をフィードバックする(最初は自転車に乗れずに転んでしまうが、次第に乗れるコツ(報酬)を掴む)3. 環境からのフィードバックを元に方策を修正する(乗れるコツを掴んだら、フィードバックをして練習精度を上げる)4. 一連の行動結果と変化した環境の中で、エージェントが再び行動を起こす(子供が転ばずに自転車に乗れるようになる)活用事例強化学習の活用事例には、次のようなものがあります。 ディープランニングとは次にディープランニングについて解説します。基本概要教師あり学習の1つにディープランニングがあります。ディープランニングとは、人が手を加えなくてもコンピュータが自動的に大量のデータを学習していく技術のことです。パターン(特徴量)の学習を自動化できる学習方法として、大きな注目を浴びています。仕組みディープラーニングはニューラルネットワーク(脳の神経回路の仕組みを真似した模型)を用いた分析手法です。ニューラルネットワークは「入力層」「中間層」「出力層」の3層から成り立っており、「入力」「変換」「出力」を自動化しています。ディープラーニングは、「中間層」を2層以上に多層化しており、より高精度の変換を実現しています。種類人が手を加えなくても大量のデータを学習していくディープラーニングは4つの種類に分類できます。 まとめ今回はAI学習(機械学習)について詳しく解説しました。機械学習は「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つに分類できます。最後に、それぞれの学習方法をおさらいしておきましょう。教師あり学習…データに正解ラベルを付けた状態でAIモデルに学習させていく手法。データの正解・不正解を明確に判断していく。教師なし学習…データに正解ラベルを付けない状態でAIモデルに学習させる手法。データの法則を導き出して、自動的にグルーピングすることを得意としている。強化学習…嗜好錯誤しながらAI性能を最大化させるための学習方法。長期的な視点に立ち価値を提供することを得意としている。このように機械学習により得意分野が異なります。そのため、機械学習について理解を深めた上でAI開発に取り組みましょう。